締め切りが迫る制作が、思う程進まず
画面を眺めつつ、思考と視覚の間にあるモノを
ひとつひとつ取り除く為のメモを取ってみたり
制作途中に撮影した段階を再度、検証して客観視
してみたりしていた。夕方ミラノ在住の優秀な声楽家の
方が、わざわざやって来てくれた。私が出来るアドヴァイス
などと言うモノは、大したモノではないと思っているし
自分自身、常に発展途上でありたいとすら思っているので
上手く研究に必要な事を、話せたかどうかは、定かでは
無いものの、僅かながら力になれれば、幸いだと思った。
ご丁寧にピエモンテ州のワインまで頂き、この山を越えたら
頂こうと思い、逆に励まされた格好となり恐縮してしまった。
深い研究を目指す芸術家にとって、分かり易さとは、常に遠い
位置に存在する。しかし、それを他者に伝える事も宿命である
と考えるし、なにより自身の欲求に対して自然な形で追求して頂き
たいと思った。少しだけミラノが懐かしく思い出された善き時間だった。
しかし、時の経つのは本当に早い。