ルネッサンス期の画家たちは、職人であり
職業として依頼を受け、制作していたので
売れっ子になると、どうしても早く仕上げる様に
なってくる。そんな中で、フラ アンジェリコは
お坊さんであり、時間と手間のかかる仕事を
丁寧にやった。その事を2006年画家の和田賢一さん
は、セゾン美術館で行われた図録に、こう書いている。
フラ アンジェリコの描く聖母子像や天使の絵は、非常に清純で高貴で美しい。
彼は、決してお金や名声の為にこうした作品を描いたのではなく、単にドメニコ
修道僧として神への信仰の証として自分の出来る事をしただけなのだ。もちろん
サインもない。板を準備し、石膏下地を整え、金箔貼り、刻印打ち、彩色という
非常に手間のかかる作業は採算を考えればやっていられない。現代の芸術家は
オリジナルを追及するあまり、こうした謙虚な姿勢を忘れてしまった。
彼の模写は、絶品だった。芸術の神への信仰の証として模写をやっていたのかも
しれない。和田さんは、毎朝早く起きて、暖かい紅茶の入った水筒を持って、
離れのプレハブで制作に、励んでいた。夕方には仕事を終え、好きなギター
を弾いたり、映画を見たりして過ごすのだと言っていた。和田さんが1時間おきに
僕の頭の中にやってくる。