イタリアで、自分の為に買ったモノに
ココナッツバターの香りのするシェービングクリーム
がある。この匂いは、ミラノでの生活を思い出し、懐かしく
感じられるし、「さあ行こう!」と言う気持ちになるので
好きだ。あとは、丸い小さなキャンバスとバルサミコ酢と
ジェノバペーストくらいで、直に使って切ってしまうだろう。
友人画家マルコのドローイングは、別にして。
しかし、目に見えない大切なモノを沢山貰ったし、感じさせて貰った。
ミラノのスフォルツァ城の公園で、母親と裸足になって日光浴した事や
早めに着いて、ヴェネチアの駅前で運河を見ながら笑って過ごした時間
を僕は、忘れないだろう。母親の明るさと強さに驚き、連れて来られた
と言うより、なんとか自分も役に立とうと一生懸命だった様に思う。
フィレンチェで風邪を引いた時、青い顔をしながら「私はいいから、好きな
絵を、思いっきり見て来なさい」と言われた時、無理をさせて悪かったと
思った。こんなに長い時間、母親と二人だけで過ごしたのは、おそらく
僕が、幼い頃以来ではないかと思う。僕自身さらに精進し、またどこかに
連れて行ってあげられる様に、さらに制作に励みたいと思った。